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2011
9 . 7

ロンドンの医療機関での「驚き・戸惑い」


皆さん、こんにちは。日本は残暑が厳しいと聞きましたが、少しは涼しくなったでしょうか?ロンドンは相変わらずお天気が悪く、今日も曇り。最高気温は17度と長袖が必要です。もう、街路樹も茶色く染まり始めて、秋の訪れを感じます。

今回は「ロンドンの医療機関で働いて、驚いたこと・戸惑ったこと」というテーマで、お伝えします。 私が働いたロンドンの医療機関は3つ。前回ご紹介しましたが、ナーシングホーム(日本の老人ホームのようなもの)、国立の循環器・呼吸器専門病院、日系の治験病棟です。

まず、どの医療機関でも共通していれることは、イギリス(特にロンドンなどの大都市)ではさまざまな国籍の看護師が世界各国から集まり働いています。ですから、イギリスの病院で働いていても、「同僚は全員イギリス人」ということは、まずないといっていいのではないでしょうか。EU拡大により、他のヨーロッパ圏からビザなしで働けるようになり、近頃はヨーロッパ諸国からより良い給料を求め、特にポーランド人やポルトガル人などが多くイギリスに働きに来ています。

ヨーロッパ圏以外ですと、昔から多いのは、ジンバブエや南アフリカ、カリビアンなど元イギリス領だった国から来ている看護師。またフィリピンやマレーシアなど東南アジアからの看護師も多いです。

ですから、英語もさまざまなアクセントが飛び交います。ただでさえリスニングが苦手な私にとって、各国のアクセントを聞き取ることは至難の業。アクセントだけならまだしも、文法めちゃくちゃな英語をカジュアルに使うことも。 たとえば「ミーノノー、ユーノー!?」。これ、なんと言っているかというと、「Me no know, You know!?」です。正しい文法に言い換えると、「I don’t know, do you know?」(私は知らないわ。あなた知っている?) こんな英語、イギリス人に通じるわけがない!と思っていると、通じてないのは私だけ(笑)。みんな理解しているのです。それどころか、正しい文法で話している私の英語のほうが通じない。用は、文法よりも発音のほうが大切なのです。(もちろん文法も大切なので、正しい英語をはなされることをお勧めします)

そして、どの国の看護師も医療英語は完璧です。医療英語はラテン語由来のものが基本なので、スペインやポルトガルなどから来ている看護師は、ほとんど苦労しません。フィリピン人は看護大学で英語で教育を受けているし、他のイギリス領だった諸国も英語で教育。医療英語に苦労しているのは、日本人の私だけかもしれません。

一生懸命勉強してきた英語なのに、実際現場に出てみると、まるでチンプンカンプン。語学を学ぶこととは文化を学ぶこと。現場で生の英語を学ぶことで、ロンドンの多国籍な文化を学びました。英語では、数え切れないほど悔しい思いをしたけれど、今では色々な国のお友達ができ、自分自身の視野、世界観が変わった気がします。

さて、他に驚いたこと。それは、日本よりも専門性がはっきりしていること。私が日本にいる10年前は看護師はどちらかというと、何でもできるように教育されていました。病棟の物品補充から、学会の研究発表まで(今は時代が変わり、日本も専門性が追求されるようになったでしょうか?)。しかし、イギリスでは、自分の仕事ははっきり決められています。物品補充はケアーアシスタントのお仕事。研究も、研究を専門とする看護師が各病棟に働いています。手術の前に詳しいことを患者様や家族に説明する「心臓外科専門ナース」や病棟で子供の遊び相手になってくれる保母さん。患者様や家族の精神的なサポートをするカウンセラーに、英語を話さない患者様への通訳をするインタープレーター。他にも栄養士・薬剤師・呼吸療法士も積極的にベッドサイドへ。一日に色々な専門の方が一人の患者様にベッドサイドに現れるので、覚えるのも一苦労。正直、「あれ?今の人は誰?」ということもあるくらいです。

専門性がはっきりしていますから、就職するときも「病院」に就職するのではなく、「病棟」に就職することになります。たとえば、求人欄を見ても、「○○病院の小児科病棟」や「○○病院の産婦人科外来」というように求人がだされています。もし、A病院の小児科病棟に就職して、そのあと産婦人科病棟に変わりたくなったら、もう一度就職試験を受けなおし、なぜ自分の専門を変えたくなったのか、はっきり意思表示することが必要となってきます。

医師の世界も専門が色々あるのですから、看護の世界も専門があっていいですよね。不器用な私にとって、ひとつのことに集中できるイギリスのシステムは嬉しい驚きでした。

そして、最後は、ちょっと肩の力を抜いた驚き。それは「お茶の時間」。ここはイギリス、TEAの国。お茶の時間は大切です。それは病院でも同じこと。いったいイギリス人は一日に何回お茶をするのでしょうか?

国立病院のPICU(小児集中治療室)で働いていたときの話です。朝7時45分に夜勤のチームリーダから申し送り。もちろんお茶を飲みながら。その後8時から仕事開始。9時半から10時ごろに、朝食のため休憩が15分間。お茶を飲みながらトーストやシリアルを食べ、人によっては、もういっぱいお茶を作り、自分の働くベッドサイドに持ち込みます。13時くらいにランチタイム。ランチの後にお茶。15時から16時に15分間の休憩でお茶。18時から19時の間に夕食の休憩。またまたお茶。20時に夜勤の看護師に申し送りして、タンブラーに入れたお茶を飲みながら帰る。それに加え、ランナーと呼ばれる看護師が手の空いているときに「お茶ほしい人いませんか?」とお茶を配ってくれることも。(ランナーとは、担当の患者を持たず、緊急時や忙しい看護師の手助けをするフリーの看護師)

今では、どこでもスターバックスをお目にかかれるほど、イギリスでもコーヒーも人気ですが、それでもやっぱりイギリス人はお茶好き。お茶なしでは仕事ができないようです。 お陰で私もすっかり紅茶なしでは生きられなくなりました。もちろん、今もお茶を飲みながらコラムを書いています。

イギリス生活9年近くになりますが、それでも毎日「驚き・戸惑い」は続きます。まだまだお伝えしたい「驚き・戸惑い」はいっぱいありますが、これ以上長くなると編集担当の方にご迷惑をおかけするので、今回はこの辺で。また次の機会とすることにしましょう。

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美鈴のLONDON日記

一口に“看護師さん”と言っても、その活躍の場は本当に様々。 いろんな業界、いろんな世界に活躍の場が広がる“看護師さん”ですが、 国境を越えて、世界を舞台に活躍されている看護師さんも少なくありません。 このコーナーでは、そんな海外に自分の活躍の場を見つけ頑張っている“看護師さん”に、日本の看護との違いなどを海外生活の日常を交えながら紹介していただきます。

著者プロフィール

筆者:中山美鈴

  • 1997年 総合病院(日本)に就職(専門は小児看護)
  • 2003年 同病院を退職し、渡英語学学校で英語を学び、ロンドン郊外の施設でボランティアなどを行う
  • 2004年 英国での看護師免許を取得のためにロンドン市内のナーシングホームに就職
  • 2005年 資格取得後、ロンドン市内の病院に就職し、3年間勤務
  • 2009年 退職後は、日系治験会社の治験病棟で勤務
  • 2010年 出産のため、産休を取得
  • 現在 退職し、子育てに奮闘中